乱視

乱視について

先日、乱視の未矯正の害について「製作事例」にて取り上げました。
(記事は下のリンクをご参照ください。)
当店にお越しになる「メガネ難民」の方々。
乱視を矯正していないメガネをお使いの方が、まあまあ多いです。
わたしは「両眼視」という観点からメガネを作らせて頂いているので、
もちろん、当店に来られた段階で、
きちんと「乱視を矯正する」ということをさせて頂くんですが、
そうすると皆さん、

「えっ!坂井さん、これどういうことなんですか?
近くがすごくスッキリ見えるー!見やすい!
今までのぼやけた視界は何だったのー!」

という反応が返って来るんですね。

「いえいえ、特別なことは何もしてませんよ。
ただ単に、今まで、本来であれば必要なはずの乱視の矯正が行われていなかったので、
乱視を矯正しただけです(^^)」

「えっ!乱視って身体に悪いんじゃないんですか?」

というお言葉を頂くことも多々ありますので、
本日は「乱視の重要性について」記事を書いていこうと思います。

眼の屈折状態は4つある。

まず、眼の「屈折状態」は4つに分類されます。

屈折状態を決定する要素

この4つの屈折状態を決定づけているのは、
角膜・房水・水晶体・硝子体の屈折力・眼軸長など色々ありますが、
とくに重要な要素は角膜・水晶体の屈折力・眼軸長のこの3つです。
これらが関わることで、皆さんの「眼の状態」の、
近視だったり、遠視だったり、乱視だったりが決まっていきます。

そもそも乱視とは?

乱視がない眼は、網膜上に正確に焦点を結ぶ。
乱視があることで、網膜上に焦点が結ばれない。
その結果、ぼやける、ダブって見える。
などの症状に繋がる。

「乱視」とは通常、角膜、あるいは水晶体の湾曲が正しい球面になっていないため、
外から入ってきた光が、眼の中の網膜上に、集まらない眼のことをいいます。
「網膜」は映画のスクリーンみたいなもので、
ここには杆体・錐体など、明るさや解像度を司る細胞が存在しています。(図、焦点の部分。)
この部分に像が結像することで、
われわれの人間の眼は、明るさを感じたり、像を鮮明に見ることができます。

しかし乱視があると、この「網膜」に上手く焦点が合わせられません。
その結果、文字や物がダブって見える、ボヤケて見えるなどの症状として現れてくるんですね。
わたし自身、日々、色々な方の眼を拝見しておりますが、
乱視がない、という眼は、実はほとんど見たことがありません。
ほぼすべての人に乱視は存在する、と思って頂いてよろしいかと存じます。

乱視の種類

乱視にはいくつかの種類があります。
ここでは「乱視の種類」について解説をしていきます。

乱視がない眼の状態

まずは、乱視がない眼の状態です。
角膜や水晶体が「円」に近い状態で、外から入ってきた光は、網膜上に結ばれます。

正乱視

乱視がある眼の状態「正乱視」です。
乱視がある状態の「正乱視」の眼は、
角膜や水晶体が、上下、または左右、あるいは斜めの方向から、
圧迫されたような形になっています。
イメージとしては、乱視のない眼の状態が綺麗な円の野球ボール⚾なら、
乱視のある眼の状態はラグビーボール🏉の形とイメージして頂けると分かりやすいかと思います。
乱視のある眼は、形が円ではないため、網膜上にピントが上手く合いません。
ある線ははっきり見えるけれど、
その線に直角に交差する線は見えにくいという症状が特徴です。
その説明を、下で行っていきます。

直乱視とその「見え方」

直乱視(60°~120°方向)

「正乱視」には種類があり、3つに分類することが出来ます。
まずは、直乱視です。
水晶体が横方向に押しつぶされた形になっていて、
乱視の軸方向が60°~120°方向を直乱視といいます。

文字は上方向にダブって見える。

直乱視は、放射線(眼鏡屋さんで検査をするときに、ご覧になったことのある方も多いかも?)を見たときに、
上方向の線が太く見えるけれど、横方向の線は薄く見えます。
年齢を重ねてくると、水晶体に弾力がなくなる傾向にありますが、
ご年配の方程、軸方向が90°方向になっていて、
この直乱視になっている人が多いなーというのがわたしの印象です。

倒乱視とその「見え方」

倒乱視
(150°~180°、0°~30°方向)

2つめは、倒乱視です。
水晶体が縦方向に押しつぶされたような形になっていて、
乱視の軸方向が150°~180°、0°~30°方向を倒乱視といいます。

文字は横方向にダブって見える。

倒乱視は、放射線を見たときに、横方向の線が太く見えますが、
縦方向の線は薄く見えます。

斜乱視とその「見え方」

斜乱視
(30°~60°
120°~150°方向)

3つめは、斜乱視です。
水晶体が斜め方向に押しつぶされたような形になっていて、
乱視の軸方向が30°~60°、120°~150°方向を斜乱視といいます。

文字が斜めにダブって見える。

斜乱視は、放射線を見たときに、斜め方向の線が太く見えますが、
その線と直角に交わる線が薄く見えます。
ちなみに、以前の遠視の記事の中で、視機能に負担を掛けやすい眼をご紹介しました。

  1. 遠視
  2. 不同視
  3. 乱視

その3つ目は乱視だったんですが、
この「斜乱視」がかなり厄介です。
乱視はそもそも矯正されていないと、見え方だけでなく、視機能事態に悪影響を及ぼしますが、
一番トラブルに繋がりやすいのがこの「斜乱視」です。
余談ですが、わたしは両眼とも斜乱視+遠視なので、
1番と3番に当てはまる、スーパー「悪い眼」です。
不同視ではないですが、もうスーパー悪い眼代表だと云っても過言じゃないかも。笑

乱視を矯正していない「見え方」と「症状」

乱視を矯正しないことで、全体的に像が「不鮮明」に見える。

さてさて。冒頭でも触れましたが、乱視を矯正していないと、どういう見え方をしているのか?
乱視の量が軽度の場合は、そこまで大きい症状を感じないかもしれませんが、
一般的には、薄暗い場所、夜に見えづらさを感じやすかったり、
信号の光、街頭などの光がにじんで見えたり、ぶれたり、ダブって見えます。
立体視的な部分では、距離感が掴めない、常に物が平面に見えている、ということもあります。

「見え方」以外の症状としては、
室内でもすごく眩しさを感じる、頭痛、眠気、吐き気を感じる人も多いです。

わたしの眼も-0.75ぐらいの乱視がありますが、
メガネを掛けていないと、遠くの景色は輪郭がはっきりしません。
ボヤっと滲んでる感じ。
そして、一番感じやすいのが「読書」などの「近くの文字」でしょうか。
メガネを外した裸眼の状態で「文字」を見ると、輪郭がハッキリしなくて、ぼやけている。
本当に読みにくいです。

乱視を矯正して、焦点を網膜に合わせてあげることで、
極端に言うと、物の見え方が、右の見え方→左の見え方に変化します。
皆さん(えっ!なんか魔法使ったの!?)ぐらいの感覚で驚かれますが、
このように乱視の矯正を行っていない方の見え方は、
「物の輪郭がボケる・滲んで見える」という、
「常にスッキリ見えない視界」が常態化されているんじゃないでしょうか。

「乱視は眼に悪い」の正体=乱視の見え方は「空間」に作用する。

乱視は眼に悪いって言われて、矯正しない、って言われたんですが…。

こう「誰か」に言われ経験がある方、すごく多いのではないでしょうか?
もうこれ、結論から申し上げます。
乱視は眼に悪い=都市伝説です。
ここまでお読みなられた方なら既にお分かりになるかと存じますが、
乱視を矯正しない方が眼に悪いことがよくご理解いただけたかと存じます。

上記の動画をご覧ください。
こちらの動画は-3.00の乱視を回転させた映像です。
乱視の見え方は空間に作用するので、このように、軸方向に歪んで見えます。

  • 直乱視…縦方向に伸びて見える
  • 倒乱視…横方向に押しつぶされたように見える
  • 斜乱視…斜め方向に伸びて見える

今まで、乱視の矯正を行ってこなかった方は、
その人の持つ乱視の軸方向に「景色が歪んで見える」んですね。
では、なぜ乱視は眼に悪い、と言われるようになったのか?
恐らくこの「景色が歪んで見える」ことの説明がうまく出来ないからではないか、と思います。

  • 乱視を矯正したメガネを掛ける。
  • 景色が歪んで見える
  • なぜ景色が歪んで見えるのか?
  • 理由が分からないから怖い。気持ち悪い。
  • →乱視=眼に悪い

一般的に「分からないこと」への恐怖感は、こういう風に推移していくものと考えられます。
知識がないところだと、歪んで見えることに対しての説明がうまく出来なかったり、
それが原因で、クレームに繋がりやすいことから、
乱視を極力入れたがらない傾向にあり、
その時の説明を「乱視は眼に悪いから入れませんよ」と、
お客さまにお伝えしている傾向があるようにお見受けします。

ちなみに最初は歪んで見えていた景色も、
脳の「視覚中枢」が見え方をきちんと学習し、やがて歪んで見えなくなります。
最初のうちだけですから、心配ありませんので、ご安心ください。

結論「乱視を矯正しない方が身体に悪い」

「乱視は眼に悪いから、乱視はいらないでしょ。」

乱視を矯正しないことで、焦点が網膜像に結ばれない訳なので、
常にぼやけた視界を約束されることになりますよね。
もしこの言葉を言われることがあったら、わたしなら、
身体に必要な物を要らないなんて簡単にいう人からメガネを買うのは、やめます。
それは、

「Aという病気の治療には、本当は、Bという薬が必要だけど、
副作用で多少の違和感が出るんですよねぇ。
あ、自分、知識が全然ないので、副作用の説明がうまく出来ないんですよ。笑
だから、Aという病気は、治療しません。
治療しなくても、まあ、なんとかなるでしょ。笑」

こう言われているのと、同じだと思って下さい。
=あなたの眼なんて、どうなっても知りません。笑
と、失笑レベルで言われているということです。

「ばっきゃろー!もう帰る!メガネなんて、買わねぇからな!!!」

って、わたしなら、その場で捨て台詞残して、家に帰るレベルですよ。笑
(ちなみに「ばっきゃろー!」の部分は、工藤新一風にお願いします!)
というコントは横に置いておくとしても、
それぐらい「乱視の矯正」は大切なことです。

乱視未矯正のメガネを使っている方に多いのですが、
乱視の分を、自分の調節を使って補っていて、その結果、

  • 調節がすごく不安定になっている。
  • 調節性内斜位になっている。

こういう方、すごく多いです。
乱視を矯正しない方が、ずっとずっと身体に悪いということが、よく分かります。

「乱視は眼に悪い」

こういう風に言われることがあったら、
まずはそれが「本当に正しいのかどうか」。
一度立ち止まって、自分の将来の眼のことも含めて、
よく考えてみてくださると嬉しいです。

再度、申し上げます。
結論、乱視は眼に悪い=都市伝説!
以上、終わり!