【事例紹介】15分以上、近くを集中して見ることができない。

【事例紹介】15分以上、近くを集中して見ることができない。

こんにちは、人にやさしく、メガネにもやさしい、福井県福井市のメガネ店、SAKAIです。
今回ご紹介させていただくのは、2年前にお客様としてお見えになった、
Iさまの息子さんのメガネです。
今回は、Iさんより「長男のメガネを作ってほしい」とのご依頼を受けたのですが、
これが、今年担当した中で、一番難易度の高い事例でした。
この時ほど、メガネ専門店として、日々の勉強を欠かさないでいてよかった、
と思ったことはありません。

永く使うことを考えて、フォーナインズのメタルフレームで!

フレーム:999.9 S-955T 3
レンズ:HOYA雅N FL1.67 ラピスコート

Iさんの息子さんは、まだ大学生。
就職活動、そして就職してからも、永くメガネを使って頂きたかったこともあり、
今回は、メンテナンスしながら永くご愛用頂けるように、
フォーナインズのメタルフレームにて製作をさせていただきました。
そこそこの強度近視なので、レンズを少しでも薄く仕上げるために、
玉型のサイズ、そして横から見たときに、レンズが目立ちにくいよう、ひと工夫してお渡しです(^^♪
レンズは、お若いですが、遠近両用と相性がばっちりの眼だったこともあり、
中間~近くが広く見え、勉強がしやすいように、
HOYAの雅Nを奮発してくださいました(/・ω・)/

レンズもかなり薄く仕上がりましたよ~!嬉
半磨きにすることで、眼に入るチラツキを押さえながら、
なおかつ、横から見たときにレンズが透明に見えるので、レンズの厚さが目立ちにくい!

それでは眼の状態を分析していきます。

10代(男性・大学生)
坂井さん、はじめまして。本日はよろしくお願いします。
今使っているメガネが弱くなってきて、見づらくなってきました。
車の運転ができて、文字を読むときに疲れにくいメガネを作りたいと思っています。
近くを15分以上集中して見ていられないことが気になっています。
15分近くを見て、5分間、ペットのモルモットと遊ぶ、を繰り返すんですが、
それも2時間ぐらいすると、疲れて、勉強をやめてしまいます。
自分の根性が足りないのかな、と思っているんですが…。

実はIさんの長男さんは、以前お店にいらして下さったことがあり、
その時に、カバーテストをさせて頂いたんですが、
なんと目視でわかるぐらいの内斜位だったんです…(´・ω・`)
近くを見ていてつらい、という自覚症状は、内斜位からくる症状そのもの。
根性が足りないとか、そういう次元の話ではないからご安心くださいね!
その症状は、お店にいらして下さった時からあったので、実はとても心配していました。

使用眼鏡(5年ほど前に某チェーン店にて)

R)S-6.00 C-0.50 AX4° ×0.4
L)S-6.50 C-0.50 AX179°×0.5

PD=63.0

眼位:
(遠方)内斜位の動き
(近方)内斜位の動き

NPC:6㎝以内(分離なし)
追従:NO

視力値もダメですが、やはり今回も、
遠方近方共に、カバーテストで内斜位の動きをします。
測定の結果、この内斜位量は「遠方3△/近方「6△」でした。

測定度数(1回目のメガネ合わせ)

R)S-6.75 C-1.50 AX175°ADD+1.75 ×1.2
L)S-7.25 C-1.00 AX20°  ADD+1.75 ×1.2

PD=62.0

眼位:
(遠方)正位 or 内斜位
(近方)+1.75加入で正位

NPC:6㎝以内(分離なし)
追従:YES

こちらで測定してみると、約1mm、瞳孔距離が眼位とは逆の外側にズレております。
これがまた内斜位に負担をかけて「近くを見ることが辛い」ということに繋がっていたと思われます。
この後、内斜位を相殺させるための度数を見つけるために、追加で両眼視の検査を行い、
Yくんの場合は+1.75度数を弱めることで、近方で内斜位がなくなることが確認されました。
本来であれば内斜位という眼位異常がある方は、2本使い分けるのがベストなのですが、
色々と相談させていただいた結果、今回は、近方で内斜位を相殺させるために、
1本のメガネで補えるように、遠近両用にて製作をさせて頂くことになりました。

「弱めのメガネが楽」かどうかは、両眼視状態を隅々まで検査して初めてわかります!

ここで注意が必要なのが「弱めのメガネが楽」は、ケースバイケースということです。
本当に弱めのメガネが楽かどうかは、このように追加の検査を行い、
両眼視の状態をしっかりと見ないとわからないし、
その「弱めが楽の」「弱め」も、どれだけ弱めれば楽になるのか?
ということも、別途詳しい検査が必要です。
なので、これらの検査を行わないで安易に「弱めのメガネが楽ですよ」といわれたら、
「あなたの目の健康は、知りません。その代わり、我々はあなたの眼で、
ふんだんに金儲けさせてもらうからね」
と言われていると思った方が良いと思います。
両眼視が崩れる=複視になる(人によっては本格的に斜視に移行する場合も)
近視の進行が止まらない=網膜剥離・白内障・緑内障などの疾患リスクもハイになる、
などの大きな健康的な弊害にも繋がりますので、ご注意ください。

そして実際に、測定した度数を遠近両用でかけてもらうと…

坂井さん、このメガネをかけると、遠方で物がボケて見えます…(´・ω・`)💦

やっぱりかー。
Yくんの眼位のズレは「内斜位」なんですが、内斜位という視線のズレは、
「調節を入れる」ことで、さらに視線が内側に引き込まれて、内斜位が悪化するから、
普段から「調節を入れない」という癖がついてしまってるんです。
遠方を見るときは「調節を入れて」遠方を見るんですが、
これを普段からやっていないから、遠方を見ると、
ピントをうまく合わせられなくて、「ボケる」ということに繋がるんです。
さっきやった予備検査のフリッパーでも、
「マイナスレンズに反応が不良」だったのはそういうことです。
それで、内斜位を相殺させるには「プラスレンズ処方」が有効なんですが、
これがいわゆる「弱めのメガネ」なんです。
ただし「弱めのメガネ」だけでは近視が進行するから、
内斜位を相殺させた近くを見るときに必要な「弱めのメガネ」と、
遠くを見るために必要な「適正度数のメガネ」この2本が必要です。

なるほど…そういうことだったんですね。
自分がずっと感じていた「弱めの方が楽」というのは、
内斜位という症状から来ていたとは。
だから、前のメガネ店でも、検査で出た度数ではしんどくて、それも、強めのメガネなのかな?って思ってたんです。
だからずっと弱めのメガネを使っていたんですが、遠くはもちろん見づらいし、かといって、内斜位を相殺させるための「弱めの度数」も中途半端で、それで近視も進行し続けて…ということの繰り返しだったんですね。

内斜位や上下斜位という眼位のズレはピントを合わせるための「調節」に、大きな負担をかけます。
Yくんも例外にもれず、両眼視状態も悪く、見え方も不安定になってしまっていて、
ずっとしんどい状況を我慢し続けて、限界に達してしまっている状態でした。
とりあえず、楽にかけられる度数に調整をして、
視機能が整うのを待って、再度眼鏡合わせを行うことにしました。

近くを15分以上見続けられるのか、テストを行いました!

今回Yくんは「15分以上集中していられない」という症状があったため、
お店で30分銀魂を読んでもらう、という装用テストを行いました。
この「内斜位」の眼位異常をお持ちの方は、
マジックワードがあって「15分」「10分」などのように、
問診票の段階で具体的に集中していられない時間が明確に出てくることが特徴です。
ちなみに銀魂は、家にあったわたしのジャンプコレクションより抜粋です笑
このころはまだ漫画を買っていたころだったんですねぇ…懐かしい…。

いつもは、15分以上集中していられないんですが、30分間、集中して銀魂を読むことが出来ました。特に銀魂1巻は読んだことがなかったので、楽しく読めました笑

内斜位はこれで相殺できたようなので、あとは、視機能が整うのを待ちます。
少しでも勉強がしやすくなって、体の負担が減ってくれたら嬉しいな。

測定度数(2回目のメガネ合わせ)

坂井さん、こんにちは!
坂井さんにメガネを作って頂いて、勉強がしやすくなり、
15分以上集中して近くを見ていても疲れにくくなりました。
でも、授業の時に後ろの席に座ると、少し見づらさを感じるようになってきました。
本日も眼鏡合わせ、よろしくお願いします。

え!やったー!よかったねー、Yくん!
前回、調節も本当に不安定だったんですが、
今回はもう視機能も整って来ていると思うので、
よりベストな度数が出る状態になっていると思いますよ!
メガネかけるの、本当に大変だったと思いますが、よく頑張りました(/・ω・)/

R)S-7.50 C-1.00 AX175°ADD+2.00 ×1.2
L)S-7.00 C-0.25 AX180°ADD+2.00 ×1.0~1.2

眼位:
(遠方)正位 or 内斜位
(近方)正位

NPC:6㎝以内(分離点なし)
追従:Smooth

メガネを常用して頂くことで、視機能が落ち着き、
本来の度数がやっと出て来てくれました!
今回、保証にてレンズ交換し、新しい度数に入れ替え、
また常用して頂くことで、眼をゆっくりと治療していきます。
球面調整をした分、前回加入度を+1.75にしたんですが、
今回は適正度数を、体が受け入れてくれたので、
必要距離に合わせて+2.00の加入度に変えて製作です。

メガネを常用して頂いたことで、ここが変化しました!
・不安定だった調節が落ち着いてくることで、検査中に見え方が変化しなくなってきた。
・内斜位を相殺させるためのメガネを作ったため、
15分以上集中して勉強を続けることができるようになった。
最終的に右目で6段階の近視未矯正、2段階の乱視の未矯正、171°の乱視軸のズレ
左目で2段階の近視未矯正、1段階の乱視の過矯正が見つかりました。
※いかにめちゃくちゃなメガネで体が悲鳴を上げていたかよくわかるズレっぷりです。

これからに期待
・左目はまだ少し調節が不安定で、少し視力が変動しやすい場面があり、ご本人さんも自覚があるとのこと。

またメガネを30分ほどかけて頂くと…

やっぱりまだ「調節を入れる」ということが苦手なんですね、僕の眼。
遠くでかけ始めはボケ・ダブりを感じました。
でも、一番初めにかけたときほどのしんどさはありませんし、
時間が経ったら、ボケ・ダブりもなくなり、
遠くもとても見やすくなりました。

そうそう、予備検査のフリッパーも、やっぱりまだマイナスに反応が不良でしたね。
半年ぐらいでは視機能は整ってこないです。
でも、最初にお店に来たときよりも、状態はかなり良くなってるし、
年齢もまだまだ若いから、回復力も高いですよ!
ゆっくりと焦らずに治していってね!

僕の年齢で、専門店でお世話になれて幸せに思いました!

今回、母が坂井さんにメガネを作ってもらったことがきっかけで、
僕もお店でカバーテストをしてもらって内斜位が発覚しましたが、
きっと母が坂井さんにメガネを作ってもらわなかったら、

なんとなくまた見づらくなってきて、
なんとなくまた安売り店で適当な検査を受けて、
なんとなく中途半端な弱めのメガネをかけて、
やっぱり近くは15分以上集中できなくて、
でもそれは、自分の根性が足りないからだ、と思い込んで、
それで結果的にダラダラ近視も進行して…


この繰り返しだったんだろうな、と思いました。
僕の年齢で「内斜位」という症状が発覚して、
なおかつ、専門店という場所でメガネを作ることができたことを幸せに思いました。
本当にありがとうございました。

Iさんの息子さん、3人ともメガネづくりをさせて頂いたんですが、
長男さんが、両眼視不良で、一番しんどい思いをされていたので、
わたしも今回、お役に立てて、本当にうれしかったです✨
ちなみに今回の事例は、勉強会グループでも発表をさせて頂いたんですが、
皆さん、とても興味津々で聴いていたことが印象に残っています。
勉強、頑張ってくださいね!応援しています!
あとまたおすすめのアニメも教えてくださいね~(^^)
※おすすめで葬送のフリーレン見ました笑

番外編:お作り頂いた三男さんのメガネです👓

フレーム:999.9 S-685T 3
レンズ:カールツァイス スマートライフヤング

こちらは、先日お作り頂いた三男さんのメガネです(^ ^♪
三男さんはまだ中学生で、こちらもメンテナンスをしながら、
永くメガネフレームをお使い頂きたいため、
アフターサービス・品質共にしっかりしている、
フォーナインズのメガネで製作をさせて頂きました。
レンズは、保証期間がなんと10カ月もある、スマートライフヤングです。
お値段もそこまで高くないんですが、それでも、
しっかりツァイスの解像度の高い見え方をしていて、とても満足度の高いレンズです。

スマートライフヤングもレンズに「ZEISS」の刻印。

子供さんのメガネを担当していて、
個人的に思うのは「度数」をきちんと合わせてあげることで、
近視の進行が最低限に抑えられる、ということ。
もちろん、身長が伸びるので、乱視や乱視軸は変化していきます。
印象的だったのが、先日、10歳のころからメガネを作って下さっていたお客様が、
先日18歳になり、メガネ新調のためにご来店いただいたんですが、
10歳のころから近視の度数はほとんど変化が見られなかったこと。
以前、見学に来られた方が、

子供の近視がすぐに進むんです。
それこそ3か月おきにレンズ交換しています。

と、仰っていて、処方箋を見せて頂いたことがあったんですが、

あー…これは、3カ月に-1.00ぐらい進むパターンの処方箋だなぁ…。

という感じの処方箋でした。実際に聞いてみると、
まさしくそのぐらいの頻度・進行で度数が変化していました。(考えるだけで怖い)
子供だからすぐに近視が進む、という経験はわたしはあまりしたことがなくて、
3カ月~半年に一回ぐらいのペースでレンズ交換をしている方は、
そもそもが「基本度数」が合っていないことがほとんど。
そして「強度近視」を育てて、緑内障・白内障・網膜剝離などの眼疾患の、
ハイリスクを自ら招いているようなものだな、と思います。

今回、メガネのかけ始めから携わらせていただけたことを、心から感謝しております。
このぐらいの弱い近視は、メガネの常用をしなくなる方も多いのですが、
メガネの常用をしない=すぐに度数が変化して、お金がかかる、だけでなく、
前述したように、「強度近視」を育てて、緑内障・白内障・網膜剝離などの眼疾患の、
ハイリスクを自ら招いているようなものです。
今回、三男さんには、メガネ常用の大切さを伝え、
数か月後に再度眼鏡合わせにいらしていただくことをおすすめして、
クローズとなりました。

未来を担う、大切な子供たちの眼。
健康的な観点からも、これからもしっかりと経過観察を続けていきます。
本当に、大切なご家族の眼を託して頂き、Iさん、本当にありがとうございました(´・ω・`)✨
今後とも、プライベートでも笑 どうぞよろしくお願い申し上げます!