【事例紹介】壊れた調節機能にもうひとつの眼鏡を。調節を助けるメガネという選択。
こんにちは。
人にやさしく、メガネにもやさしい、福井県福井市のメガネ店 SAKAI です。
本日は、2017年頃からお付き合いのあるお客様・Oさんの眼鏡について
ご紹介させていただきます。
ご縁がつながり、再びご来店くださったお客様
Oさんは、もともと福井の大学に通われていたことをきっかけに、
わたしの父親の代から当店をご利用くださっていたお客様です。
大学卒業後は地元へ戻られましたが、
なかなかご自身の眼に合う眼鏡店に出会えなかったこと、
そして「眼の調子がおかしい」と感じるようになったことをきっかけに、
娘である私の代になってから、再び当店へ足を運んでくださいました。
度数は安定してきたのに、楽にならない理由
Oさんは、2017年に初めてご来店下さいましたが、
2018年の段階で度数や視力は大きく変わらなくなっていたものの、
『ピント調節が安定しない状態(調節不全)』が長く続いていました。
これまで、常用眼鏡で様子を見ながら経過観察を行ってきましたが、
どうしても調節不全の症状が改善しきらず、
2022年に「調節不全の症状を緩和するための眼鏡」を追加し、
併用しながらのサポートへと切り替えました。
そして今回、この取り組みがとても良い方向へ進んだのです。
Oさん、実は調節不全の症状には、
プラスレンズ処方が最も有効という風に言われています。
もちろん即効性はありませんが、一度試してみますか?
ただわたし自身も、お客様にお作りしたことはないので、
どれぐらい効果があるのかは即答できません。
それでも、やってみますか?
そうなんですか!自分の眼がおかしくなってしまったことはすごく実感しているので、
少しでも良くなる方法があるのであれば、前向きに試してみたいです。
坂井さん、今回のメガネ、プラスレンズ処方にて、製作をお願いします。

来店からこれまでの経緯
初来店時 年齢34歳
2017年8月 初来店 調節が不安定で、屈折が変化しやすい
2018年9月 屈折度数は「概ね」安定
調節が不安定だったこともあり、調節系の検査を取り始める。
~2020年 度数に大きな変化は見られないが、調節に不安定さが残り、
近視・乱視共に-0.25、乱視軸は5~10度程度、揺れる。
過矯正が徐々に抜けていく。
2022年 近くから遠くへピントが合いづらい時がある、と訴えあり。
調節を助けてあげるためのメガネを製作
最終来店時 年齢42歳
2025年 調節不全の症状はほぼ寛解
検査から見えてきたこと~調節に関する検査結果について~

レンズ:カールツァイス スマートライフ
少しデータとして不足している部分もあります。
わかりやすい部分のみ、抜粋して掲載します。
その点、ご容赦頂ければ幸いです。
#20…調節を入れる(遠方へピントを合わせられるかの検査)期待値:-2.00
#21…調節を緩める(近方へピントを合わせられるかの検査)期待値:+2.00
正常な回復値…±0.25
※以下期待値を達成した数値のみ黄色下線で表記
利き目:右目
2018年9月1日(この段階で#7Aがほぼ確定へ)
R)S-2.50 C-1.50 AX175° ×1.0
L)S-4.25 C-2.00 AX180° ×1.5
#20 右眼(-1.50ボケ / +0.50回復)左眼(-1.25ボケ / +0.75回復)両眼(-3.50ボケ / +1.25回復)
#21 右眼(+1.75ボケ / -0.50回復)左眼(+2.00ボケ / -1.00回復)両眼(+2.00ボケ / -0.75回復)
コメント:
この時点では、
調節を「入れる」「緩める」という動作を一度行うと、
ピントを元の位置に戻すまでに時間がかかる状態が見られました。
遠方・近方いずれの場合も、
瞬時にピントを切り替えることが難しく、
調節反応が全体的に鈍くなっている段階と考えられます。
2019年3月20日
R)S-2.25 C-1.25 AX180° ×1.2
L)S-4.00 C-2.00 AX5° ×1.2
#20 右眼(-2.50ボケ / +0.75回復)左眼(-2.75ボケ / +0.50回復)両眼(-3.00ボケ / +0.50回復)
#21 右眼(+1.00ボケ / -0.50回復)左眼(+2.00ボケ / -0.50回復)両眼(+1.75ボケ / -0.50回復)
コメント:
前回と比べると、
調節を入れる方向の反応は、少しずつ出始めてきています。
ただし、ピントが合うまでに時間を要する点は依然として残っており、
調節機能はまだ安定しているとは言い難い状態です。
2019年8月23日
R)S-2.25 C-1.25 AX175° ×1.2
L)S-4.00 C-2.25 AX5° ×1.5
#20 右眼(-2.00ボケ / +0.50回復)左眼(-1.50ボケ / +0.25回復)両眼(-3.00ボケ / +0.25回復)
#21 右眼(+1.25ボケ / -0.50回復)左眼(+1.50ボケ / -0.50回復)両眼(+1.25ボケ / -0.50回復)
コメント:
この頃から「調節を入れる検査」において、
回復値が±0.25に到達するデータが出始めました。
一方で、前回(3月)と比較すると、
左眼では期待値に届かない項目が見られ、
調節の左右差・不安定さが残っている状態と判断できます。
2020年3月20日
R)S-2.00 C-1.50 AX180° ×1.2
L)S-4.25 C-2.25 AX5° ×1.2
#19 近方:15cm以下ボケ無
#20 右眼(-2.25ボケ / +0.25回復)左眼(-2.25ボケ / +0.25回復)両眼(-4.00ボケ / +0.25回復)
#21 右眼(+1.25ボケ / -0.25回復)左眼(+1.75ボケ / -0.25回復)両眼(+1.00ボケ / -0.25回復)
コメント:
2020年の検査では、
調節を入れる方向の検査において、すべて期待値を上回る結果となりました。
遠方へピントを合わせる力については、
安定した回復が確認できた時期といえます。
2022年9月14日(プラスレンズ処方)
・近くから遠くへのピントが合いづらい時がある。
=調節系の症状で日常生活に支障が出ている
・上記のデータからプラスレンズ処方へ踏み切る。
コメント:
日常生活の中で、
「近くから遠くへのピント合わせがスムーズにいかない」
という症状があり、これまでの検査データから、
調節系の負担が原因で、生活に支障が出始めている段階と判断し、
調節を助ける目的で、プラスレンズ処方へ移行しました。
2025年11月23日
R)S-2.00 C-1.25 AX170° ×1.2
L)S-4.25 C-2.25 AX180° ×1.5ぼんやり
#19 遠方:51.5㎝ボケ / 50.5㎝回復 近方:15cmボケ / 17cm回復
#20 右眼(-2.75ボケ / +0.25回復)左眼(-2.00ボケ / +0.25回復)両眼(-3.75ボケ / +0.25回復)
#21 右眼(+1.00ボケ / +0.25回復)左眼(+2.00ボケ / -0.25回復)両眼(+1.50ボケ / -0.25回復)
コメント:
2025年の検査では、
「遠方へピントを合わせる検査」において、
右眼・左眼・両眼すべてで期待値をクリアする結果が確認できました。
一方で、
「近方へピントを合わせた後、すぐに遠方へ戻す動作」については、
まだ反応の遅れがわずかに残っている状態です。
調節機能は大きく回復していますが、
瞬時の切り替え動作には、引き続き注意が必要な段階と考えられます。
数値から見えてくる、度数と調節の移り変わり
検査データを時系列で追っていくと、状態の変化がとてもよく分かります。
度数・視力ともに、2020年頃までは安定しにくい状態が続いており、
その過程で、強すぎた度数(過矯正)が少しずつ抜けていく様子が見て取れます。
2022年の時点でも、まだ度数は安定しづらく、
そこで当時の現用度数をベースに、
調節への負担を軽減するためのプラスレンズ処方を行いました。
2025年の来店時の検査では、調節が安定し、
球面値が2020年当時とほぼ変わらない数値が確認できました。
この結果を踏まえ、
今回の検査をもって、最終的な度数決定としています。
調節ダメージは、短期間では戻らない
ここまでに要した期間は、約8年。
一度、調節系にダメージが出てしまった場合、
回復には5年以上かかるケースが多く、
さらに、完全に元の状態へ戻るとは限らないということが、
このデータからも読み取れます。
調節不全は、短期間で改善できるものではなく、
時間をかけて向き合う必要がある状態であることを、
あらためて実感させられる事例でした。
実は、とても多い「調節不全」
当店にご来店されるお客様の約9割は、
合わない眼鏡が原因となり、
何らかの調節不全の症状を抱えています。
そのうち、約3割の方は
日常生活に支障が出るレベルまで症状が進んでいます。
メガネをお渡ししてから1年以内に、
まれに「度数が変わった気がする」「また見づらくなってきた」
とご連絡をいただくことがあります。
よくお聞きする具体的な症状
このようなご相談の際に、多くみられる症状は次のようなものです。
- 夕方になると、遠くがボケて見えづらくなる
- 近くにピントが合いづらい
- 遠くにも近くにも、スムーズにピントを合わせられない
- 全体的にぼんやりして見える
- さっきまで見えていたのに、見えたり見えなくなったりを繰り返す
これらは主に「ピント調節」に関わる症状です。
度数ではなく「視機能の低下」が原因のケースがほとんどです
実際に再検査を行うと、度数そのものが変化しているケースは、ほとんどありません。
多くの場合、原因は「調節不全 / 調節過剰」です。
これらの症状の多くは、度数そのものの変化ではなく、
「視機能の低下」が原因で起こっています。
視機能の低下とは
- 目に入った情報を脳できちんとピント合わせして処理する力
- 遠くと近くをスムーズに切り替える働き
これらが、合わないメガネを長期間使い続けた影響で、うまく働かなくなっている状態を指します。
イメージとしては、 自転車の車輪がサビて、スムーズに回らなくなっている状態に近いです。
「見えづらい=すぐに度数が合っていない」というわけではなく、
「度数」と「視機能の低下」は分けて考える必要があります。
視機能の低下は1本のメガネでは解決できない
ここで、とても大切な前提があります。
視機能が低下している場合、
1本の眼鏡ですべてを補うことは難しく、
複数の眼鏡を使い分けることで、視機能の改善が期待できる
という考え方です。
非老眼世代の調節不全に有効な「プラスレンズ処方」
非老眼世代の調節不全において、
特に効果が高いと考えられているのは、
「プラスレンズ処方」です。
これは今回の事例を見ても、効果の高さは明らかです。
ただし、
単純に度数を足せばよいわけではなく、
両眼視機能(左右の眼のバランスや使い方)まで考慮した設計が必要になります。
正直に言うと、これまでこの
「調節不全改善を目的としたプラスレンズ処方」
をご提案した中で、
前向きに製作に踏み切ってくださったのは、Oさんだけでした。
症状の寛解、そして次へ
結果として、
Oさんの調節不全の症状は、きれいに寛解。
二人でその変化を確認できたときは、
本当に嬉しく、印象深い出来事でした。
そして同時に、
「調節不全で悩んでいる方には、
もっとこの選択肢を知ってもらうべきではないか」
という思いが強くなりました。
今回、Oさんにはその想いにご理解をいただき、
事例紹介へのご協力を快く引き受けてくださいました。
プラスレンズ処方、積極的に薦めてあげてください!
3年前に、プラスレンズ処方をご提案いただいたこと、
改めて本当に感謝しています。
当時は「ただ眼鏡を掛けているだけ」という感覚で、
自分の眼がどれほど楽になっていたのかを、
正直なところ意識できていませんでした。
ですが、坂井さんに検査の中で指摘していただいたことで、
ふと気づいたのです。
「そういえば、以前は近くから遠くへ視線を移すときに、
ピントが合うまで時間がかかっていたのに、
最近はそれを感じなくなっているな」と。
今回、プラスレンズ処方の眼鏡をレンズ交換のために預け、
その間、通常の眼鏡で過ごしたことで、
改めてプラスレンズ処方の効果を強く実感しました。
眼の疲れ方が、明らかに違ったのです。
そのことで、
「自分の眼は、まだ完全に回復した状態ではないこと」
そして
「プラスレンズ処方をやめると、調節機能に大きな負担がかかること」
を、身をもって理解しました。
調節不全に悩まれている方には、
ぜひ積極的にプラスレンズ処方を提案してあげてほしいと思います。
とても嬉しい言葉を頂きました(´・ω・`)✨
わたしも知識上では「調節不全=プラスレンズ処方が有効」ということは知っておりましたが、
どこまで有効かということがデータとしてなかったため、
今回、これだけ効果があるんだ!ということを、
Oさんが事例として示して下さって、本当にびっくりしました。
またプラスレンズ処方については、
眼鏡学校の先生が教えて下さったこともあり、
次回の勉強会「調節不全」の授業で「症例」として報告させて頂くこととなっております。
Oさん、本当にありがとうございました!
まとめ
調節不全は、
「気のせい」でも
「年齢のせい」でもなく、
適切な方法で向き合えば、楽になる可能性のある症状です。
この事例が、
同じように悩んでいる方の、
ひとつの参考になれば幸いです。
Oさん、この度は、とても貴重な事例紹介にご協力頂いただけでなく、
嬉しい口コミも本当にありがとうございました!
またいつも、遠方からご来店下さって本当にありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします(^^)!

