強いストレスは視覚障害を引き起こす。

ドクターX、原守の心因性の視覚障害

実はわたし、テレビ朝日のドクターXが大好きです。
わたしとはまったく真逆のタイプの、
米倉涼子演じる大門先生が、決断力も判断力もスピーディで、とてもカッコ良くて、
ファーストシーズンから現在に至るまで、一話も欠かさず見ています。
医療系のお客さまがご来店されたときにも、

「この問診にあるカンファレンスは、
あのドクターXで、御意!とかやってる会議室ぐらいの広さで、雰囲気なんでしょうか👀?」
「そうそう、あんな感じの広さです(^^)」

なんて、会話に思わず出ちゃうぐらい大好きですし、
何よりも、普段目にすることのない、
「医療の世界を知って、業務に活かす」という意味でも、
とても勉強になるドラマだと個人的には感じております。

先日その話の中で「心因性の視覚障害」が取り上げられていました。
原守さんという外科医が、
「手術中だけ、調節が不安定になり、眼が見えづらくなる」という症状に悩まされていて、
眼科にも受診しましたが、異常はなし。
大門先生が「心因性の視覚障害」だと見抜き、
「プレッシャーのない手術なんてないよ!」
と原先生を一喝する、という場面でした。
さすが大門先生、かっこいい!
原先生は、患者さんの生死に関わる場面でプレッシャーを感じて、
それが原因で「心因性の視覚障害」になっていたんですね…。

心因性の視覚障害とは?

心因性の視野障害は、
ヒステリーの場合には菅状視野や螺旋状視野が見られます。
通常「視野」は距離が遠くなるにつれて円錐状に広くなっていきますが、
菅状視野では、広くならずに筒状で、
また視野測定一周し元の位置に来たときに、
同じ点ではなく順次狭くなり螺旋状を呈する視野を螺旋状視野といいます。

心因性の視覚障害になりやすい年齢と性別と原因

眼科学の教科書によると「学童期の女児に多い」とありますが、
後述の事例を見ている限り、ドクターXの原守さんも、
うちのお客さまも、40代以降のお客さまで、
そういう方でも心因性の視覚障害になっているケースを見ると、
あまり性別や年齢は関係ないのかも、とも思ってしまいます。
今はコロナ禍も重なり、仕事がなくなったり、収入が減ったり、
その影響で強いストレスにさらされる方も以前よりは増えていますよね。
原因としてはやはり、交友関係や家庭内問題など、心理的なストレスが背景にあり、
それが解消されることで、視覚は正常化する、とのこと。
美味しい物を食べて、好きなことをして、よく眠る、これだけでも少し違うのかもしれませんね(^^)

心因性の視覚障害の事例

当店の特徴は、一度ご来店頂いた方は、ほとんどがリピーター様になって頂いて、
またご来店頂く機会が多いこと、です。
そのため有難いことに、長期間に渡って、
お客さまの眼を経過観察する、という機会に恵まれ、
一対一の人間関係をきちんと築かせて頂いております。
そうして長年にわたって担当させて頂いていると、

(あれ…?今日、何かいつもと雰囲気が違うな…。)

と思う瞬間もあります。
わたしたちの仕事は、お客さまをしっかりと「観察」することが仕事なので、
むしろそういうことに気が付きやすいのは、職業柄、なのかもしれません。
そして、軽い違和感を抱えながらも、検査に入ると、

(あれ?調節がいつもよりも不安定…。どうしたんだろう…?
問診表にも、遠方でピントが合いづらくなり、
見えづらさを感じることが多くなった、と記載があったし。)

しかもさらに検査を進めると、
近方でも調節のバランスが不安定になっていて、調節が乱れています。
本来であれば、近方で調節が揃わない場合、
治療用のメガネを組むんですが…。
何だか最初に入って来られた時から違和感を感じたので、
同じ度数でメガネを作り、そのままそっと様子を見ることにしました。
その数年後、お客さまがまたメガネを作りにご来店され、
検査をさせて頂くことになりました。
年齢的な影響から来る度数の変化はありましたが、
あの時の調節の不安定さが噓のように改善されて、
綺麗に眼が治っているではありませんか!
事情を説明して、お話を伺ってみると、
その頃やはり、強いストレスを抱えていた、ということでした。

ちなみに最近も、

「新しいメガネを作りたいんだけど、実は半年前から、遠方が見づらくなってきた。」

と、お客さまがご来店され、検査をさせて頂いたんですが、
調節がとても不安定。フリッパーで調節を出し入れして、安定させても、なお、不安定。
何だか、あの時のお客さまと症状がすごく似てる(;^_^A
これだけ調節が不安定だと、検査の数値はまるで当てになりません。
裸眼視力は変わっていないので、恐らくこちらも心因性の可能性が高そう。
こちらのお客さまの場合は、もう長い長いお付き合いなので、
相談をさせて頂き、数ヵ月後に、もう一度検査にいらして頂くことにしました。
色々とお話をお伺いして、談笑して、最後は笑って帰って頂いたので、
すこしは気持ちが明るく、前向きになってくれていたら嬉しいです(^^)

自分自身に起きた心因性の視覚障害

実はわたし自身も、心因性の視覚障害を経験したことがあります。
それは去年の10月のこと。
そのころ、公私ともに悩みを抱えていて、
その悩みがピークに達したんでしょうね。
夕方、ピアノのレッスン前に、本を読んでいて、
何気なくテレビに眼をやったら、テレビの文字がダブって見える(=複視)。
しかも何だか、視野も狭い(=視野狭窄)。
あれ?と違和感を感じて、本に眼を落すと、
下側半分が見えない(=視野欠損)。
現在、ある症状で投薬治療中を受けているのですが、
その副作用の中に「血栓症」というのがあるんです。
そのため、半年に一回の血液検査(血栓ができていないかどうか)は欠かせないし、
万が一、血栓症の症状が出たら、すぐに県立病院(かかりつけ)の救急に行くように、
という指示を受けていたため、もうこれは、ついに血栓症を併発したのかもしれない、と青褪めて、
急遽レッスンは中止、救急に駆け込みました。
眼の専門家なのに、眼が見えなくなったら、本気でシャレになりませんよ。笑
そのあとの車の中でも(もちろん運転は母)視野狭窄、視野欠損に続いて、
両端が何だか星が散っているようにチカチカする、その後、頭痛がやって来ました。
しかし、病院に着くころには、頭痛以外の症状も消え、血栓症の疑いも低い、とのこと。
後日念のため、通院している科で、MRI検査を受けることになり、
脳外科の先生にもカルテを見てもらったんですが、どこも異常なし。笑

原因は閃輝暗点?

血栓症でもなく、どこにも異常がないということで、
さすがに眼を扱う仕事に従事する者としては、
原因が知りたかったので、眼科学の教科書を開いて、
自分に起きた視覚障害を調べてみると、
閃輝暗点という症状があることを知りました。

閃輝暗点とは片頭痛の前兆であり、突然、閃光が起こり、数分間続き、その間視野の一部が見えなくなり、その後、数時間頭痛が続くもので、本態は脳血管の一過性の痙攣と考えられている。

現代の眼科学より

突然閃光が起きてはいないですが、何となく症状が似ていて、
もしかして閃輝暗点だったのかな?と今では思っています。
せっかく貴重な経験をしたので、問診で片頭痛持ちのお客さまには、
「閃輝暗点」というものもあるよ!ということを含めて、
この経験をお客さまにもお伝えさせて頂き、
事例として理解を深めて頂いております。

芥川龍之介も閃輝暗点に悩まされていた!?

羅生門や地獄変、蜘蛛の糸で有名な芥川龍之介も、
この閃輝暗点に悩まされていたようで、
歯車という小説が、この閃輝暗点を文章化した小説と言われております。

芥川龍之介=文豪ストレイドッグス!

「絶えずまわっている半透明の歯車」
「次第に数を殖やし、半ば視野を塞いで」
「長いことではない」
「今度は頭痛を感じはじめる」

「歯車」より

わたしはこういう風には感じなかったので、
閃輝暗点ではないのかもしれませんが、
芥川龍之介はヘビースモーカーだったそうなので、
喫煙により、血流障害が引き起こされて、それが片頭痛に繋がって、
閃輝暗点を引き起こしていたのかもしれませんね。
ちなみに芥川龍之介は、太宰治の大ファンだったそうですよ。
その関係性が文豪ストレイドッグスの中にも引き継がれておりますね。笑

ストレスは溜めないことが一番!

ここまで長々と書いてしまいましたが、
結果的に心因性の視覚障害は、眼に現れる「心身症」です。
身体にストレスが現れるということは、それだけ身体がSOSを発している証拠です。
そのサインにきちんと耳を傾けてあげることで、
休息をとろう、あまり考えすぎないようにしよう、なるようになる、
美味しい物を食べて、よく寝よう!(←わたしのこと!?笑)と思って、
自分自身の心と身体を労わってあげて頂けると嬉しいです(^^)

余談ですが、ときどき眼疾患に関わる相談をメールや電話でお受けすることがありますが、
わたしの専門は眼疾患ではなく屈折異常です(^^)
眼疾患のご相談は、眼科さんにお願いしますね~!