【事例紹介】遠近両用メガネは、万能ではない。

【事例紹介】遠近両用メガネは、万能ではない。

こんにちは、人にやさしく、メガネにもやさしい、福井県福井市のメガネ店、SAKAIです。
本日ご紹介させて頂くのは、遠近両用は万能じゃないよ、という事例のお客さまです。
皆さん、遠近両用メガネを掛けることで、遠くも近くも見えちゃって、
すごくオールマイティで便利なメガネだと思っていらっしゃると思いますが…。
遠近両用こそ、両眼視機能をしっかりと考慮して作らないと、大きな落とし穴が待っています。
今日は、その事例をご紹介したいと思います。

事務職(40代・女性)
坂井さん、こんにちは!今日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
今使っているメガネが遠近両用なのですが、度数が合っていないように感じています。
遠くも近くも見づらいし、眼精疲労もあります。
それにこのメガネを掛けていると、バランス感覚がおかしくなる感じがあって…。
ピントがスムーズに合わせにくかったり、立ち眩みのような感じもあります。

初めまして!こちらこそ本日はよろしくお願い申し上げます!
かなり見え方でお困りですね…。
ご提出いただいた問診の内容から、度が強いメガネを掛けている可能性を疑っておりますので、本日はまずは基本度数から、しっかりと見直しをさせて頂きますね!

まずはメガネフレームのサイズ感の見直しから!

フレーム:tsubura T-09 kin-iro
レンズ:HOYA 極 遠近両用

Wさまがお持ちになられたメガネを見せて頂くと、
お顔に対して、まあまあ大きいメガネを掛けておりました。

そういえばメガネ、下がりやすいな、って思ってました…。
そうか、サイズ感だったんですね…。

今はオーバーシルエットが流行りなので、大きめで掛けて頂くことも素敵ではあるんですが、基本のサイズ感を一度見直されると、メガネが下がりやすい、ということも少なくなってくるはずです(^^)

ということで、お選び頂いたメガネは、小顔の女性さん用に作られた、
tsuburaのT-09に、遠近両用レンズをセットさせて頂きました!
レンズはキャンペーン中でお安くなっていたこともあって、
見え方重視で、HOYAの極みをお選び頂きました(^^)
この極、本当に見え方が良くて、まるで単焦点のような広い視界が特徴!
側方視野が狭い、というお悩みや、近くをもっと広く見たい、と感じていらっしゃる方には、
特に試して頂きたいレンズです!

それでは眼の状態を分析していきます。

モダン部分の塗装は、線香花火をイメージした、大人可愛いモデルです。

使用眼鏡① 遠近両用

R)S-1.25 C-0.25 AX17°ADD+1.50
L)S-2.00 ADD+1.50

処方箋で作られたというこちらのメガネですが、
前述の主訴でもあげましたが、距離感が遠くなったり、立ち眩みや眩暈があり、
使いづらいため、あまり使用していないとのことでした。
過矯正の疑いがかなり濃厚のメガネです。

使用眼鏡② 単焦点 常用メガネ

R)S-1.50 ×0.8ぼんやり
L)S-1.75 ×1.2半分

眼位:(遠方)右:外斜視 左:右上斜位  / (近方)右:外斜視 左:右上斜位の動き
NPC:6cm以内(ただし眼があまり寄らない)
追従:NO(右があまりスムーズではなく、眼だけで物を追い切れず、顔が動く)

遠近両用メガネが使いづらいとのことで、普段はこちらの単焦点のメガネを使用し、
近くは、裸眼で見ているとのこと。
ただし裸眼で見ていても、何となくスッキリしない見づらさを感じていらっしゃるようです。
こちらも乱視が矯正されていないこともそうですが、
細かいところまで見ていくと、何と右眼が斜視になってしまって、
普段から右眼を使わないで生活されていたことが判明しました。

測定度数(1回目のメガネ合わせ)

R)S-0.25 C-0.25 AX95°ADD+1.00 ×1.2
L)S-1.00 C-0.75 AX80°ADD+1.00 ×1.5

眼位:(遠方)右上斜位 / (近方)右上斜位
NPC:6cm以内(分離なし)
追従:YES

ここが改善ポイント!
この段階で、右眼で6段階のの過矯正、1段階の乱視の未矯正、
左眼で3段階の過矯正、3段階の乱視の未矯正、
第二のお年頃「老眼」が見つかりました。

両眼視機能まで見ていくと、使っていなかった右眼を、
しっかりと使ってくれるようになりました。

近くで寄らなかった眼もしっかりと寄るようになり、
眼だけで物が追い切れず、顔が動いていましたが、
しっかりと眼だけで物を追ってくれるようになりました。
右上斜位の眼の動きは残りましたが、
こちらはしっかりと融像していることを確認したため、問題はありません。

やっぱり、度が強いメガネを使ってましたね…。
しかも、度の強さが半端なく強いので、それが原因で、右眼はもう使わない!
って言う感じになっておりました。
左眼はそうでもないんですが、使っていなかった右眼が、
遠くにも近くにも、上手くピントを合わせられなくなってしまってるだけでなく、
検査の途中で「見るの、やーめた!」ってなっちゃってます…💦
度数も恐らく変わっていくと思いますので、数か月後にメガネ合わせで、
またご来店下さいね(^^)

あっ…!そういえばいつも運転していると、
いつの間にか左側に寄ってるなぁ、なんでだろう…と思っていたんです。
度の強いメガネを掛けることで、右眼を使っていないことで起きていたんですね…
でも全然気が付かなかったです…(;;)

遠近両用が上手く使えるか検査を行ってみると…?

#13B  6EXO
+1.00加入後 12EXO
#16 5.5△ボケ / 9.9△分離
#17 ボケ× / #17B 10.50△分離

数値だけ見ると、なんのこっちゃ?でしょうが、
遠近両用世代の方は、まずはこの検査、絶対に、欠かせません。
近業作業が多い現代人が遠近両用でデスクワークを行うことで、
トラブルが出ないか?という検査を、当店では必ず追加で行っていきます。
こちらのWさまですが、遠近両用を作ることで、近方で、
トラブルが出やすいデータを示しました。

一時的に眼が外側に広がっているだけということもあるのですが、
老眼の度数を通すことで、眼が外側に大きく広がり、それに対しての補正力がない、
というデータが出ています。

えっ、そうなんですか?
それはどういうところで今回のメガネに繋がって来るんですか?

(図を描きながらご説明)
少しわかりづらいかもしれませんが、人間の眼は、
近くを見てるとき、眼が寄りますよね?
他の人が「少しだけ眼を寄せて近くを見続ける」ことに対して、
Wさまの場合は「大きく眼を寄せて近くを見続ける」ことになるんです。
そうすると、少しだけ眼を寄せる人に対して、
大きく眼を寄せないといけないので、まずはそこで疲れますよね?
そして近くを見るためには「眼を寄せることを持続し続け」なければならないんですが、
その「眼を長時間寄せ続けることがが苦手」というデータが、#16~#17Bまでの値です。

あぁ、なるほど!
だから、近くで、眼を寄せて見続ける必要がある遠近両用だと、
トラブルが起きやすい、ということですね!

そうです!とりあえず現在は、一時期的に、
眼が外側に広がっているということも考えられるので、
まずは一旦、遠近両用でデスクワークを行ってみてください。
それで、以下の症状が出た場合は、速やかにご連絡下さい。
・夕方に遠くにピントが合わせられない
・遠近両用でデスクワークを行うことで、頭痛、肩こりが出やすくなった。

こういう症状が出た場合は、近くの作業を老眼鏡にするだけで、
格段に症状が減って、楽に仕事がしやすくなりますから(^^)

メガネの常用から数ヵ月後…

坂井さん、こんにちは!
実は、遠近両用を1日使っていると、夕方には遠方でピントが合わなくなって、
裸眼の方がマシってぐらい、ボヤケが酷くなるんです。
あと、当初と比較して、見え方も変わってきた気がします。

Wさま、こんにちは!
ふむふむ、やっぱり来ましたか。
まずはこの遠方でピントが合わなくなって、裸眼の方がマシって言うのは、
前回の老眼の度数を通すと外側に広がる、という所から来ています。
こちらの症状は、老眼鏡を作り足すことで、落ち着きます。

それから見え方も変わってきたというのは、
メガネを常用して頂いたおかげで、本来の度数が出て来たよ、っていうことなので、
全体的に良い方向に向かってますよ~!ご安心ください!

測定度数(2回目のメガネ合わせ)

R)S-0.75 C-1.00 AX95°ADD+1.00 ×1.2
L)S-1.00 C-1.00 AX85°ADD+1.00 ×1.2

ここが変化したポイント!
右眼で2段階の近視未矯正、3段階の乱視の未矯正、
左眼で1段階の乱視の未矯正、5度の乱視軸の変化が見られました。
左眼に関しては、ほとんど誤差の範囲みたいな感じですが、
調節が不安定だった右眼に関しては、大きく度数が変化しました。
前回、右眼はとても調節が不安定だったのですが、それはほとんど感じなくなりました。
恐らく度数もこれ以上大きく変わっていくことはないと思われます。

これからに期待!
大分良くなってきたんですが、近くの距離で、
「調節緩めてね!」という作業が、まだ右眼で苦手になってしまっています。
調節系にまでダメージが到ってしまうと、数カ月やそこらで視機能は回復しないので、
ゆっくりと時間を掛けながら、今後の回復を目指していきます。

老眼鏡を追加しました。

老眼鏡、すごく近くがスッキリ、くっきり、はっきり見える!
あと、何というか、言われた通り、眼を寄せなくても良いので、
遠近両用よりも、すごく楽に感じます!

良かったです!眼を使い続ける以上、もちろん、目の疲れなどの症状は
ゼロにはなりませんが、夕方などの疲れてくるシーンで、
遠方でピントが合いづらいという症状は格段に減って来ると思います。
遠近両用はこれから、お買い物を行ったときに値札を見る、携帯を見る、などの、
「ちょっと手元を見る」という感覚でお使い頂いて、
「しっかりと近くを見続ける作業」の時は老眼鏡をお使い下さいね(^^)
まだまだ視機能にダメージは残っているので、
遠近両用では近くにピントが合いづらい場面でも、
老眼鏡だとスッとピントが合ってくれるので、
今のWさまには、特に老眼鏡の方が使いやすいと思います!
ゆっくりと新しいメガネで、眼を労わって行ってあげてくださいね!
この度はありがとうございました!

遠近両用は、両眼視機能までしっかり見ることが大切!

ちなみに今回の事例は、特に珍しいケースでもなんでもありません。
人それぞれという言葉があるように、人の眼も十人十色です。

・遠近両用が使いづらい
・遠近両用だから近くが見えない
・遠近両用を使っていると疲れる

こういう言葉の裏側には、様々な原因が隠れていると思います。
それを一つ一つ紐解いて、こんがらがった糸を、一本の糸に戻していく。
そしてその上で、その人の眼が本当に、遠近両用向きの眼なのか?
一人一人のお客さまときちんと向き合うことで、
快適なライフスタイルを考えていくことが大切です。

この度は本当にありがとうございました!
まだまだ眼は発展途上段階だと思いますので、
ゆっくりと新しいメガネと仲良くなっていかれることを、陰ながら応援しております!